Tears


『ブルマを……ママを大切にしろよ……』

『元気でな……トランクス』

 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
 いくらそう考えても、喉に石でも詰まったかのように声が出ない。

 今まで見たこともなかったような表情と、優しげな声。そして自分を抱き寄せた腕の温もり。
 普段の父なら決して口にしないだろう言葉、殆ど見せたことのない穏やかな眼差しに、嬉しくも気恥ずかしい思いと同時に沸き起こった、訳のわからない不安。

 戸惑う自分に静かに微笑み、父は踵を返し、駆け出した。
 真っすぐに、すべてを呑みこまんとする、凄絶な光の中へ。

『パパ!!!』

 必死に手を伸ばしても、その背中はどんどん遠ざかり、やがて薄れ、光の中へ消えていく。

『待ってよ、パパ! パパ!!!』

 行ってしまう。父が、もう二度と手の届かないところに。往ってしまう。

『パパ─────!!!!!』



「!!!」

 がばっ、という擬音とともに、トランクスは飛び起きた。

 心臓がばくばくと波打ち、振動が頭の中でどくんどくんと響き回る。
 荒い息をこぼしながら瞬きをし、周りを見回してようやく今自分がいる場所を思い出す。
 静寂に包まれた神殿の一室の中には、自分の呼吸の音だけが荒々しく響いていた。

 ──夢、か。

 未だ脳裏をよぎる映像の残滓を振り払うように頭を振る。

 ──夢。

 本当に、全部夢だったらいいのに。
 今日起こったことが、全部。

 けれど、考えてもすぐにその儚い思いは掻き消される。
 自分が自宅の部屋ではなく、ここにいることが、今までのことが、そして今しがたうなされた悪夢が、決して幻ではなかったことの証明なのだから。

 ぱたり。ぱたり。

 握りしめた小さな拳の上に、いくつもの水滴が落ちる。

「……っく……」

 ふと、傍らから聞こえてきた小さな嗚咽に意識を向ける。
 見れば、隣に寝ている悟天が、こちらに背を向けたまま丸くなりながら、何ごとかを呟いていた。

「……にいちゃん……ぐすっ……」

 その言葉に、トランクスは目を細めた。

 ──そうだ。
 自分だけじゃない。悟天も今日、大事な肉親を失ったのだ。
 幼い頃から父代わりであり、優しく尊敬できる存在だった、大切な兄を。

 少しの間、沈黙が部屋の中に下りる。

 喉にせり上がる痛みを飲み込み、両目を少し乱暴にごしごしと擦ると、トランクスはそっとベッドから下り、音を立てないように部屋を後にした。



 神殿から外に出ると、少し冷たい風がトランクスの頬を撫でた。
 まだ湿り気を残す瞳を上に向け、唇を噛んで夜空を見つめる。

 ──パパ。

 滅多に見られないほどの星の海を見ていても、浮かんでくるのは父のことばかりだった。

 どうしてあの時。パパはあんなことを言ったんだろう。
 どうして、一緒に戦わせてくれなかったんだろう。
 一緒に戦えば、魔人ブウだって倒せたかもしれないのに。
 どうして、一人で戦って死んじゃったんだろう。
 ──どうして。

 ちかちかと星の瞬く夜空に、初めて自分を抱き寄せた父の最後の姿が浮かび、堪えきれず零れた雫が一粒、うつむいた拍子にぽたりと彼の足元を濡らした。

 ──その時。

 ふと、視界の隅を何かがちらりとかすめたのに気づき、トランクスは涙を拳で拭って顔を上げた。
 目を凝らし、辺りを見回した視線の先に映ったのは───夜の闇にひっそりと溶け込むように佇む、細く、華奢な背中だった。



 そこは、満天の星空だった。
 普段は見ることもないだろう、大小さまざまな星屑が彩る光のオブジェがどこまでも続き、見るものを圧倒する。
 けれど。
 今の彼女には、その光のひとつひとつが悲しく、目に痛かった。

 なかなか寝付けず、風にでも当たろうと部屋から出てきたものの、胸の中に渦巻く思いがそう簡単に拭い去れるはずもなく。

 あれから、既に何日も過ぎたような気がする。
 そう思わずにはいられないほど、たった一日であまりにも多くのことが起こりすぎた。

 一体、どうして。
 どうしてこんなことになったんだろう。
 つい今朝まで、いつも通りだったのに。
 今でもまだ、どこか現実感がなく、宙に浮いたような感じすらする。
 ──けれど。
 すべては紛れもない、現実なのだ。

 あの天下一武道会で起こった悪夢のような出来事から、すべて。

 ──どうして。
 問いかけても答えてくれるものはなく、ただ黙って見ていることしかできなくて。
 無言で彼女を包む星空さえも、今は彼の姿を思い起こさせるだけの辛いものだった。
 星の見える夜には、よくカプセルコーポの屋上や庭で佇み、空を見上げていた彼。
 その後姿を見るのが、好きだった。
 けれどもう、その姿を見ることも、二度とないのだ。

 ──こんな時に、こんな形で、こんな空を見たくなかった。

 星明りを映した瞳が揺れ、涙が一筋、頬を伝った。



「──ママ?」

 どれくらいの間、そうしていただろうか。
 不意に後ろから声をかけられ、ブルマは一瞬びくりと肩を震わせた。
 慌てて右手で目を擦り、極力平静を装ってゆっくりと振り返る。
 そこには、彼女と同じように、両目を赤くしたトランクスが立っていた。

「──どうしたの、トランクス。こんな時間に」

 震えそうになる声を抑え、ブルマは息子に優しく尋ねた。

「……うん。……なんだか、眠れなくて」

 視線を下に落とし、ぽつりと呟くトランクスを見て、ブルマの胸を痛みがよぎった。

 ──そうだ。
 自分だけじゃない。この子も、同じように辛いのだ。誰よりも尊敬し、慕っていた父を突然失った悲しみをその小さな心に背負わされ、どう感情を表したらいいのかわからないに違いない。

「……そう。……あたしもね、ちょっと眠れないの。だから、少し風に当たろうかと思ってね」
「……うん。オレも」

 泣いた跡を見られまいとうつむいたまま頷く息子の肩に手をそっと置き、ブルマは寂しげに微笑んだ。
 ──こういう意地っ張りなところは、あいつにそっくりね。
 胸の奥で呟き、同時に再び脳裏をよぎった夫の顔に、つられて零れそうになった涙を懸命に堪え、息子の前では泣くまいと唇を引き締めた。

 その時。

「──眠れないのか」

 彼女たちの方へ近づいてくる足音と一緒に声が響き、二人ははっと顔を上げた。
 暗がりから徐々に現れた長身の影は、少し間を置いたところで立ち止まり、二人に静かな視線を向けた。
 意外といえば意外な相手に、ブルマは少し気まずそうに笑い、ちょっとね、と呟いた。

「何だか目が冴えちゃって。──大丈夫、少し風に当たったら戻るわ。…トランクス、あんたも冷えたらいけないから、早く戻りなさい」
「──うん。でも、オレももう少しここにいるよ」
「……」

 自分の服の裾を掴み、ぽつりと洩らす小さな息子の頭を、ブルマはそっと撫でた。

「──そうか」

 二人の様子を見守っていたピッコロは、少しの間何か考えこむような表情をしていたが、今はそっとしておいてやるべきだと判断したのか、「明日のこともある。……なるべく早く休むようにしろ」とだけ言い残し、踵を返そうとした。
 が、

「……ねえ、ピッコロさん」

 不意に口を開いたトランクスの声に呼び止められる。

「──何だ」

 ゆっくりと振り返るピッコロを、トランクスは真剣な目で見上げ、言った。

「……あの時、パパは何て言ってたの? どうして、オレと悟天を戦わせてくれなかったの? ……パパは……、パパはどうして、一人で戦って……死んじゃったの?」
「……トランクス……」

 震える声で、唇を横一文字に引き締め、真っすぐに問いかける息子の表情に、ブルマは何も言うことができなかった。──いや、あえて言わなかったのかもしれない。……なぜならそれは、彼女自身も知りたいと思っていたことだったから。

「………」

 ピッコロはしばし無言でトランクスを見返していたが、彼の──そして、彼女の眼差しが望んでいるものを察し、少しためらったのち、彼らと同じように夜空を見上げて立ち……言った。

「──おまえたちにはわからなかったかもしれん。だが、今まで何度も強敵との戦いを経験してきたベジータには、あの時既にはっきりとわかっていたんだろう。あの魔人ブウが、オレたちが何人でかかっても到底勝てる相手じゃない、ということをな」

 言葉を選びながら、一言ずつ噛みしめるように、彼は続けた。

「だからあいつは、おまえたちを巻き込まないために、あの行動を取ったんだ。ああでもしなければ、おまえたちは魔人ブウと戦うと言って聞かなかっただろうからな」
「……」

 ──確かに、父もそう言っていた。魔人ブウには、何人でかかっても勝てないと。
 ピッコロの指摘を否定はできなかった。確かに自分は、まだ甘かったのかもしれない。
 ──だけど。それでも。
 それでも、戦いたかった。父と一緒に。父の役に、立ちたかった。
 そうすれば、もしかしたら。

「……それじゃ、ベジータは……」

 ブルマがぽつりと洩らす。
 彼女にも何となく理解できた。
 魔人ブウとの戦いの時、トランクスもその場にいたことを。そして、ベジータが子供たちを勝ち目のない戦いに巻き込まないために、一人で魔人に挑んだであろうことを。

「……ああ。あいつはトランクスと悟天を気絶させ、できるだけ遠くへ離れろと言って、オレに二人を託した。……そして、自分の命と引き換えに、魔人ブウを跡形もなく消し飛ばそうとしたんだ。──己の命の力のすべてを、光のエネルギーに変えて…な」
「え………」

 その言葉に、ブルマとトランクスの目が見開かれる。

「地球全体の大気が震えるほどの、凄まじい光と爆発だった。魔人ブウを倒すには、それしかないと……あいつが自ら選び、決意した末の、最後の手段だったんだ」

 ブルマは何かに打たれたように動けなかった。

 ──命の力。光のエネルギー。…爆発。

 瞬間、彼女の脳裏を閃光のようにあの時のことがよぎった。
 あの惨劇の後、状況を把握しきれないまま引き上げるしかなかった、天下一武道会場からの帰り道。
 突然、彼女たちの乗った飛行艇を襲った、激しい衝撃と爆風。
 そして、直後に感じたあの嫌な胸騒ぎ。

 ──まさか、あの時。あの時、ベジータは。

 地球の大気を震わせるほどの、凄まじい力。魔人ブウを倒すために、彼が自らの命を投げ打って引き起こした、光の嵐──それが彼の遺した、最期の……命の閃きだったというのだろうか。

 ──そんな……そんなことって……

 瞬きも忘れたように見開かれた瞳が、滲んで揺れた。

 二の句が継げない二人の心情を察しながら、ピッコロは少し考えた。
 今の彼女たちには酷な話かもしれない。……また、あいつも知られることを望んではいないだろう。
 だが、この二人にだけはどうしても伝えておかなければならない気がして、彼は続けた。

「ベジータが、悟空との決着を何よりも望んでいたのは確かだろう。そのために、手段を選ばない行動に出たことも、事実かもしれん。……しかし、最後の最後に、あいつは自分の意思で違う道を選んだ。……サイヤ人としてのプライドよりも、悟空への拘りよりも……あいつ自身が守りたいと思ったもののために、戦うことを選んだんだ」
「………」

 言葉が出なかった。ただ、彼の一言一言が、砂に染み込む水のように、深く胸に響いてくる。

「……辛い話をしてすまなかったな。──結果として、魔人を倒すことはできなかったかもしれん。だが、あいつは、最後はおまえたちのために……自分のプライドのためではなく、一人の男として──おまえたち家族の生きるこの星を守るために、己の命を賭けて戦ったんだ。…それだけは知っておいて欲しいと思った」

 ピッコロはそこで言葉を切り、ただじっと立ちすくむ二人を静かに見やると、まだ母の半分ほどの背丈しかない少年に視線を落とし、言った。

「……だから、強くなれ、トランクス。あの、誇り高い父親のように。ベジータの血を引くおまえならできるはずだ。…あいつもきっと、そう望んでいるだろう」
「………うん」

 涙で滲む両目を下に向け、何度も拳で顔を拭いながら、トランクスは頷いた。

 ──パパ。

 ママを大切にしろよ、と静かに呟いた父の、真っすぐな眼差し。元気でな、と自分に言い残した時の、穏やかな笑顔。それらが意味していた決意と覚悟、そして想い。

 まだ幼いトランクスは、小さな胸に迫る、その潰れそうなほどの感情を表現する術を知らなかった。
 けれど。

「……強くなるよ、オレ。パパみたいに。そしてきっと、魔人ブウを倒してみせる。絶対に」

 小さな拳を握りしめ、競り上がる喉の痛みを飲み込みながら、彼はそう言った。父親によく似た鋭い瞳に、決意の色をはっきりと浮かべて。

「……ああ。……さあ、そろそろ休め。明日も早い。フュージョンの特訓はまだ始まったばかりだからな」
「うん」

 ピッコロはそう言い残して踵を返し、神殿の方へ戻っていった。



「……話したのか? ピッコロ」

 神殿の入り口の前を過ぎると、柱の影からクリリンが窺うように顔を出した。
 ピッコロは「ああ」と一言だけ答え、立ち止まると少しだけ二人の方を振り返った。

「……そっか」

 少しだけ咎めるような視線を浮かべながら、クリリンも同じ方を見やる。
 ピッコロを責めているのではない。ただ、今話すのは少し早すぎたのではないかと思ったのだ。
 ブルマもトランクスも、詳しい事情を知らぬまま突然ベジータの死を知らされたのだ。あの時の様子を知ることが、彼を失った悲しみに追い討ちをかけることにならないか、クリリンには気がかりだった。

「何もわからないよりは、知っておいたほうがいいこともある。…ベジータが天下一武道会場でやったことを見ていたなら、尚更だろう」
「……そう、だな」

 自分たちが石にされた後に何があったのか、悟空やヤムチャたちから聞いた時、クリリンは少なからず衝撃を受けた。それを間近で見ていたブルマなら、そのショックは自分の比ではなかっただろう。まして、その出来事の中心にいたのが他ならぬ彼女の夫だったのだ。なぜ、と思い悩んだとしても無理はない。
 トランクスがその場にいなかったのは、せめてもの幸いというべきだったかもしれない。

「あの二人なら、大丈夫だろう。きっと理解できるはずだ」
「……ああ」

 小さく頷き、クリリンは無言で視線の向こうに佇む二人の影を見つめた。
 ベジータが何を考え、悩み、そして思いつめていたのか、その心の内を知ることはできない。
 だけど、自分が最後に見た彼の姿。直接会話を交わしたわけではないけれど、子供たちをピッコロに託し、たった一人で魔人ブウに挑んでいった時の姿こそが、彼が長い葛藤の末に行き着いた、紛れもない本心だったのだろうと、今なら確信できる。

 ──あいつは初めて、自分以外の者のために戦おうとしているんだ。己の命を捨てて──

 あの時ピッコロが呟いた言葉が改めて脳裏に甦り、クリリンは祈るような目で彼の妻子を見つめた。
 彼が最期に選んだ行動の本当の意味が、きっと彼女たちに伝わることを願いながら。



「──ママ。ママ、大丈夫?」
「……え」

 心配そうに自分を見上げる息子の視線に気づき、ブルマははっと現実に引き戻された。

「え、あ……大丈夫よ。ごめんね、ちょっとボーッとしちゃって」

 トランクスに余計な心配をかけまいと、無理に笑顔を作って応えを返す。

「ママ、泣かないでよ。オレ、パパの分まで頑張るから。……パパが言ったんだ、死んじゃう前に。『ママを大切にしろ』…って。だから、オレ、強くなる。きっとママを守ってみせるからさ」

 ──え……

 息子の言葉に目を瞬いたブルマは、知らずぼやけていた視界に気づき、慌てて顔をごしごしと擦った。

「……そう」

 ──あいつが、そんなこと言ってたの……

「……そうね、あんたなら、きっと強くなれるわ。あいつの息子だもの。頑張って」
「うん。……それじゃ、オレ、もう寝るよ。明日も早いから。…ママは?」
「うん……あたしはもう少し、ここにいるわ。大丈夫よ、すぐ戻るから。あんたは明日も訓練があるんでしょ? 早く休んだほうがいいわ」
「でも…」

 心配そうに見上げる息子の頭を撫で、ブルマは「大丈夫よ」と繰り返して微笑んだ。

「うん……じゃあ、先に戻ってる。ママも早く休んでよ」
「わかってるわ。お休み」
「うん」

 ちらちらと振り返りながら神殿へ戻っていく息子の背中を見送り、再び一人になったブルマは、もう一度頭上に広がる星空を仰いだ。

 場所は違っても、どこかで繋がっている地球の空。──彼と一緒に何度も見上げた、宇宙からの光の群れ。

「……っ……」

 細い肩が小刻みに震え、小さい嗚咽が途切れ途切れに洩れる。
 忘れていた涙が堰を切ったようにポロポロと溢れ、いくつも頬を伝った。

『あいつは、最後はおまえたちのために──おまえたち家族の生きるこの星を守るために、己の命を賭けて戦ったんだ』
『──パパが言ったんだ、『ママを大切にしろ』…って』

 ───ばか。

「……ぅ……っく……ぇ……」

 ──今まで一度も、言葉にしたことなんかなかったくせに。
 最後にそんなこと言うなんて、ずるいわよ。
 あたしの知らないところでそんなこと言われたって、わかるわけないじゃない。
 ほんとに、最後の最後まで、素直じゃなくて、へそ曲がりで……意地っ張りで。

「ベジータの……ばかぁ……」

 逢いたい。
 もう一度、あの無愛想な表情と、漆黒の瞳であたしを見てほしい。
 そしてあんたの口から言ってほしい。
 どんなに素っ気ない言葉でも構わない。あんたが言ってくれるなら、どんな小さなことでも。

「でなきゃ、あたし……信じてなんかやらないんだから……!」

 わかっている。どんな言葉よりも、彼が最期に選んだ行動こそが、何よりの証なのだと。
 だけど、それでも。

 逢いたい。もう一度。

 涙でぼやけた空を見上げたブルマの頭上を、小さな流れ星が三つ、細く尾を引いて走った。

 もしも、願いが叶うなら。
 どんな形でも構わない。もう一度、ベジータに逢いたい。

 七つの光の球ではなく、儚く消え行く星の光に。
 ブルマは祈った。ただ、彼のことだけを想って。


 佇む彼女を包み込むように、星屑の海が、小さく、静かに瞬く。

 その願いが聞き届けられるであろう時が、そう遠くないうちに訪れると、今はまだ、告げずに。


<Fin.>




ようやくこのサイト初のベジブルらしいベジブルです。でもベジいなくてごめんなさいm(__)m 読んだ通りの話ですので出しようがなかったのです^^; 状況が状況なのでめっさ暗いし。
この話は、私がリアルタイムでDBにハマっていた当時から形にしたかった唯一の話です。
当時はまだワープロもなく、当然インターネットなんて普及してませんでしたから、形にするとしたら同人誌しかなかったわけですが、レイアウト・コマ割り能力というものが根っから欠けている私には、漫画にするなんてとてもじゃないけど出来ませんでした。
サイトを開設し、オンラインという発表の場を得て、また少しは文字書きを経験してようやく納得のいく形で表現できるかなと思ったので、思い切って書いてみました。
この話を書こうと思ったのは、当時ベジータが自爆した時のわりとすぐ後になります。
当然生き返るかどうかもまったくわからない、リアルタイムで経験したあの不安で辛い日々の真っ最中でした。彼が最後に示したブルマやトランクスへの愛を目の当たりにした時、もうただただ滂沱の涙を流しておりましたから、私。
少しでも、そんな彼の気持ちに対するブルマやトランクスからの描写を見たい、きっとこうであってほしい、という強い衝動からこの話は生まれました。私自身、もうベジータには二度と会えないかもしれない、という辛さを少しでも吐き出したかったのかもしれません。
(この話を書く時も、アニメの「愛する者のために…」を音だけ聴きながら書いてたのでもう泣きっぱなしでした)
10年越しに改めて形にしてみて、当時思い浮かべていたものとは若干違いますけど、ほぼ思っていた通りに書けたかな、と思います。
他のサイトさまのSSを見ていると、ベジータの最期の様子を彼女たち(主にトランクスですけど)が知るのは、大体ベジータが生き返った後の話で、伝える役目をクリリンが担うことが多いのですが、私は当時からこんな形で知らされていたんじゃないかな、と思ってました。(勿論私の主観ですけど)
その真実を二人に伝えたのも、ピッコロさんじゃないかなと思ってたんです。やっぱり、最後にじかにベジータと言葉を交わし、彼の想いと決意をその目で確かめた唯一の人ですから。彼の口から直接、伝えてほしいなと思ったわけです。
そして、ベジータが自分たちのために命を賭けたと知った時のブルマやトランクスの想い。
彼らの絆は、これくらい、いやもっと深いはずだと信じて疑いません。
そんな私の強い気持ちがこのSSには色濃く出ています。
欲を言えば、トランクスとブルマと、両者の気持ちをきちんと表現したかったのですが、話の流れ上トランクスがちょっと弱かったかなと感じてます。やっぱり、どしても最後はブルマがメインにきちゃうもので。。うまく伝わって頂けるといいのですが。
それにしてもピコさんの台詞難しかった〜。あんまり説明的になりすぎず、感情をこめて伝えるようにしたいと思ったのですが、まだまだ力量不足ですね。。あと、クリリンは最初出す予定なかったんですけど気がついたら出てました(笑) やっぱり、あの時の様子を語るならこの二人は外せませんね。ナメック星で最初にベジータが死んだ時と自爆の時と、両方ともその場にいたのはこの二人だけですし、彼の変化を直接その目で見ていて知っているわけですから。
内容が内容なので暗いですが、あの頃から書きたかったものが書けてすっきりしました。
なお、ブルマさんのトランプ遊び云々の突っ込みに関しては、わたくし当時も今もその辺きれいさっぱり見ておりませんので一切考えてません♪ 以上!
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