たぶん続かない突発SS置き場。


 ぽたり。
 ぽたり。
 肩口から左腕を伝って流れ落ちる真紅が、点々と地に落ち、じわじわと広がっていく。
「……ちっ」
 小さく舌打ちをしながらも、脇腹を押さえている右手やその周りも既に吸い切れなくなった鮮血が滲み、地面を紅く染める面積を増やしていく。
 辛うじて動くのは右腕と、両の脚くらいか。
 冷静に自身の身体の状態を分析しながら、しかし彼ははっきりと悟っていた。
 とっくに限界を通り越している今の彼の身体は、殆ど気力だけで持ちこたえているようなものだった。
 既にまともに動ける状態ではないことは百も承知。おそらく、全力の攻撃に耐えられるのもあと一度が最後だろう。
 しかし、それでもなお、彼の心は平静だった。
 これまでの激闘の連続で、流石に敵も無傷ではない。あと一度、まともに攻撃を食らわせることができれば。
 出血のためか、霞み始めた視界を目を眇めて睨みながら、敵の動向を予想して、静かに気を溜める。
「ベジータ! 待て、貴様、その身体でまだ戦うつもりか!?」
 負傷したトランクスと、彼を庇って爆発に巻き込まれ、気を失った悟飯をみていたピッコロが、俄かに上昇し始めたベジータの気に目を見開き、驚きに叫ぶ。
「さっきの攻撃で奴のパワーも落ちている。決定打を叩き込むなら今がチャンスだ。貴様はさっさとそいつらを連れてここを離れろ、巻き添えを食うぞ」
 振り返らず、抑えた声音で告げるベジータに、ピッコロが怒鳴る。
「正気か、貴様! その状態で全力で攻撃などすれば、間違いなく死ぬぞ!」
「オレのことなど気にしている暇があったら、さっさと行け! 巻き込まれたいのか!」
 うねる金色の気流を立ち昇らせ、有無を言わせぬ口調で投げつけられる言葉は、彼の本気を表していた。
「馬鹿が! 頭を冷やせ、ベジータ! 今、おまえが捨て身で攻撃したところで、奴にとどめを刺すことは不可能だ! それはおまえが一番よくわかっているだろう!?」
 犬死にする気か、と言い募ろうとしたピッコロは、しかしその刹那、僅かに顔を振り向かせたベジータの、無言の視線に気圧された。
 その、翡翠の眼差しにあるのは、殺気でも、焦燥でもなく、一点の迷いもない、真っすぐな光だけ。
「……承知の上だ。それでも、奴を一時的に大人しくさせることができれば、カカロットが戻ってくるまでの時間稼ぎにはなるだろうよ」
 微かな笑みの形にすら見える穏やかな表情を浮かべ、彼は告げた。惑いのない声で、はっきりと。
「貴様はその二人を早く連れて行け。命に別状はないはずだが、軽い怪我じゃない」
「ベジータ!」
 早まるな、と言いかけて彼の肩を掴もうとしたピッコロの手は、寸前で乾いた音を立てて火花に弾かれる。
「オレに構うな、早く行け!! ───はあああああ!!!」
 もう振り返ろうとはせず、ベジータは自由の利く右手をぐっと握り、身を低くした反動を利用して地を蹴り、真っすぐに跳躍した。──最後の、力を振り絞って。
「やめろ──っ!! ベジータ────ッ!!!」
 届かぬ手を伸ばし、叫ぶピッコロの目の前で、彼の後姿は迸る発光に包まれ、吹き荒れる爆炎の中へたちまちのうちに吸い込まれていった。
はい、もう説明の必要もございませんね(笑)
たまーにこういうシチュが浮かんでは発作的に書きたくなるんですよねー。ボロボロ王子もさることながら、ピコさんとの会話を書くのが好きなようです。
ちょっとは自分のことも考えて欲しいなーと言いつつ思いつくのはこんなんばっかし。笑
いいんだ、自分が楽しければ♪(←


 それは、一瞬の出来事だった。
 誰もが何が起こったのか理解できず、ただ目の前の光景を呆然と見詰め、立ち尽くす。
「……ぁ、う……、…ゲホ…ッ!」
 苦しげに呻く声と、嫌な呼吸音と共に吐き出された鮮血が地面に散る。
 瞬間、凍りついていた空気が動き出す。
「…………!!!」
 埋もれていた瓦礫を押し退け、辛うじて身を起こした彼の両目に飛び込んできたのは、力なく“奴”の手に引き上げられ、串刺しにされた息子の姿。
「……あ……あ」
 がくがくと両足を震わせ、青い瞳をただただ恐怖と衝撃に見開いたまま、ブルマが声を絞り出す。
 その後ろでへたり込んでいるブラは、声もなく身を竦ませる。
<………こいつはもう、用済みだな>
 胸を貫いた右手を引き抜き、滴る血を払うと、“奴”は事も無げに言い捨て、トランクスの首を掴んでいた左手を振りかざし、邪魔なものを振り払うように彼を放り投げた。
 地面に点々と紅い跡を残し、無造作に放り出された身体はそのまま重力に引かれて重たげな音と共に地面に投げ出された。
「いやああああ!!! トランクス──────ッ!!!!!」
 瞬間、空気を引き裂くようなブルマの絶叫が響き渡り、彼女は脇目も振らずに一心にトランクスに駆け寄った。
「しっかり、しっかりしてトランクス!!!」
 既に意識のない息子の身体にすがりつき、ブルマが涙声で呼びかける。
「お願い、もうやめて……!! どうして、どうしてこんな……っ!!」
 うわ言のように泣き叫ぶ彼女を、白金(しろがね)の両眼がチラリと一瞥する。
 悟空の姿形をした“敵”の、しかしそれが決して彼ではありえないことを物語るかのような禍々しい双眸が、忌々しそうに細められる。
<煩い女だな。大した生命力も持っていない人間など、役にも立たん。……消えろ>
 そう“奴”が鬱陶しげに呟いた刹那。
「!!」
 徐に上げられた血塗れの手の先から、一筋の閃光が走り──それは、何の躊躇いもなく、彼女の身体を貫いた。
 瞬間。
 言葉もなく、息をすることすら止まったかのように、彼の面差しが凍りつく。
「……っ……あ……」
 声を上げる間もなく、鈍い音と共に光の残滓が飛び散り……彼女はそのまま、息子の上に折り重なるように頽(くずお)れた。
 誰もがただ、目の前の惨劇を、まるで現実感のない悪夢のように呆然と見つめ、凝結した冷気の中に立ち竦んだその時。
『…………う、あぁあぁぁあああ────────ッ!!!!!!!!』
 天を裂くかの如き咆哮と、目映い閃光が気流の嵐を巻き起こして爆発した!
「!!?」
 その衝撃に突き動かされ、我に返った皆が目を見開いて光の根源を凝視する。
 ──他に何も要らない。今、この時に必要な「力」さえ、あれば……!
 声なき叫びが空を割り、大地を裂き、凄まじい爆炎となって立ち昇った刹那、一点に凝縮した光の粒子を破り、ひとつの影が真っすぐ“奴”に向かって飛び出した。
<!! なに!?>
 急転した事態に驚愕の色を見せる間もなく、唸りを上げて空を切った拳が“奴”を捉え、轟音と共にのめりこむ。
「はあぁああぁあ!!!!!!」
<ぐぁっ!!>
 立て続けに浴びせられる拳と気弾の集中砲火に、さしもの“奴”も避ける暇すらなく、瞬時にして岩山の向こうに吹き飛ばされ、見えなくなった。
 拳を力の限り握りしめ、両肩で荒く息をこぼしながら、彼ははっと自分の手を見やり、そこで初めて自分の身体が紅い体躯へと変化していることに気づく。
「……あ、ああ……」
「……ベジータさん…も、超サイヤ人4に……!」
 目の前で繰り広げられた一瞬の出来事に、しばし唖然としていた悟飯と悟天が、ようやく我に返った様子で呟く。
 無我夢中だった。ただ、ブルマとトランクスが目の前で倒れた瞬間に己を貫いた、全身の血が沸騰するかのような──自身の無力感に対する──激しい怒り。
 凄まじい感情の爆発で頭の芯が真っ白になり、自分の中で何かが弾けた。
 それが、おそらく引き金になったのだろう。
 刹那の逡巡のあと、拳をぐっと握ったベジータは、顔を上げるとすぐに踵を返した。
「いやあぁああ!! ママ、お兄ちゃん!!!」
 恐怖のあまり放心状態だったブラが、我を取り戻したのだろう、倒れ伏した母と兄に泣きながら駆け寄る。
「しっかりして、死んじゃいやあああ!!!」
「落ち着け、ブラ!!」
 半狂乱で泣き叫ぶ娘を制し、ベジータはぐったりと力をなくした妻と息子の身体を抱き起こすと、服の端を裂いてきつく二人の身体に巻きつけ、応急の止血を行う。
 真っ青な顔と、今にも掻き消えそうに弱々しい気。それが焦りを増長させる。
 ベジータは逸る心を抑え、二人の胸の上で両手をかざすと、気を送り込み始めた。
 遅れて駆け寄ってきた悟飯と悟天、それにチチやビーデル、パンも固唾を飲んで成り行きを見守っている。
 今ここで起こっていることは、悪夢でも何でもない、紛れもない現実なのだ。
 ありえないはずの現実に、誰もがただ祈るような気持ちで見守るしかなく。
 やがて、可能な限り気を分けたベジータは、二人の顔にわずかに色が戻ったのを確かめ、小さく息をつく。
「……これで、あとしばらくは持つはずだ。……動けるか、悟飯、悟天」
 弱く揺らめく命の灯火。だが、まだ大丈夫。まだ時間はある。そう己に言い聞かせながら、彼は立ち上がり、後ろの二人を振り返った。
「……え、ええ」
「今すぐ、二人を連れて天界へ向かってくれ。仙豆があればそれでも構わん。今なら、まだ間に合う……!」
「え? ……あ」
 踵を返し、前へ歩み出しながらそう告げるベジータの言葉に、最初目を瞬いた悟飯は、しかし彼の意図をすぐに察すると、「はいっ」と頷いた。
「悟天、いくぞ!」
「う、うん!」
 悟天もその意味を理解したのだろう、兄を手伝ってそれぞれブルマとトランクスを静かに背負う。
「頼んだぞ……、そいつらを………死なせるな………!」
 両足を踏みしめ、遥か岩山の向こうを睨んだまま、ベジータは振り向かずにそう呟いた。
 冷静に押し殺した声に、すべての思いをこめ。
「……はい!」
 その声に、悟飯が力強く頷く。
 本当なら、彼自身が自分の手で、今すぐにでも二人を連れていきたいに違いなかった。
 ……しかし、今この状況で、“奴”を止められるのは彼しかいない。
 この悪夢を止められるのは、同じ力を持つ彼しかいないのだ。
(ベジータさん……お父さんを、お願いします……!)
 胸の内で願いを託し、悟飯は「悟天、急ぐぞ!」と弟を促して飛び立った。
「二人とも、頼んだだぞ!」
「悟飯さん……悟天さん、お願い……ママとお兄ちゃんを、助けて……!」
「ブラちゃん……」
 見る見るうちに小さくなっていく影を見上げながら、女性たちが祈るような気持ちで呼びかける。
 泣き崩れるブラの背に、ビーデルとパンがかける言葉もなく、ただそっと手を添える。
 その様子を見守っていたピッコロは、すぐに天界にいる同族に向かって呼びかけた。
(聞こえるか、デンデ!)
(は、はい!)
(状況は見ての通りだ、おまえも今すぐ悟飯たちの元に向かってくれ! あの状態では、おそらく天界に着くまでには…あの二人は持たん……!)
(はい、わかりました!)
 ピッコロの緊張感がデンデにも伝わったのだろう、彼はすぐに下界へと向かって降りていった。
 その気配を確かめながら、ピッコロは厳しい眼差しを変えずに瓦礫の山の向こうを睨んだ。
 そして、同じ方向を見据える紅い背中に視線を移し、願う。
(頼んだぞ……今ここで、“奴”を止められるのは……あいつを救えるのは、おまえしかいないんだ……!)
 両の足で地を踏みしめ、気を落ち着かせるように握った拳を下ろし、目を閉じる。
 迷いはない。戦いにおいて、迷いは命取りとなる。
 今、自分がすべきことは、“奴”を必ず止めること。
 それができなければ、すべてが無に帰すのだ。
 だから。
 止めてみせる、必ず。
 ゆっくりと開かれた青い双眸に、鋭い光が静かに漲る。
 無言の決意を包むかのように、巻き起こった風が背中に伸びた髪を揺らして過ぎ去った。
はーいまたまた趣味大全開ネタキタよw
こっちはかなり捏造入りまくりのえすよんネタでございます。
王子も自力でえすよんに変身できて当たり前と断言するワタクシですが、一方でブルマさんの協力もあって二人で成し遂げたってところもベジブル的にはそれはそれでおいしいシチュでありまして。
で、ならばブルマさんの危機に初めて自力で変身する展開があってもいいじゃないか!という願望と妄想が暴走した結果こんなブツができましたw
ベースは一応GTを基にしてはいますがあくまで“一応”ですので細かいところはすっぱり無視してます。
これもいずれちゃんと書きたかったネタですけどね…無理だろな。


 そこに広がる光景は、先ほどまでの平原の風景とはまったく姿を変えていた。
 空間に開けられた澱んだ穴は、夥しい瘴気を撒き散らしながらその口を広げ、周りのものすべてを巻き込み、吸い込んでいく。
「くそっ!」
 矢継ぎ早に飛んでくる禍々しい稲妻を気弾で弾き飛ばし、辛うじて攻撃を回避し続けてはいたが、気を失ったトランクスを抱えていては思い切った攻撃ができず、状況を変える決定打には至らない。
 その上、右肩と左脇腹に負った傷は思いのほか深かったらしく、そこから流れ出る血がじわじわと体力を奪っていく。
 今トランクスから手を放せば、あの歪んだ空間に飛ばされてしまう。かといって、どこか遠くへ一旦避難させる隙を敵が与えてくれるとは思えなかった。
『ケケケケ、消えろ消えろ! この星のすべての生命ごと、暗黒の渦に飲み込まれてしまえ!』
 狂ったように哄笑する敵の表情に既に正気の色はなく、自分の身ごとすべてを道連れにすることも厭わないだろう。
 瘴気の渦が巻き起こす嵐は凄まじく、超サイヤ人4の力をもってしても、この状況では塞ぐことは不可能だ。
(くそったれっ! せめて、こいつだけでも…!)
 徐々に低下していく体力を自覚しながら、それでも息子の小さな身体を決して放すまいと力をこめるものの、このままでは最悪の結果も免れない。
 だが、状況を打開する手が見つからず歯噛みした時、不意に嵐の中から声が響いた。
「ベジータ!」
 風に紛れて聞こえたその声にはっと反応して振り向くと、吹き荒れる熱風の向こうから、見覚えのある姿が見えた。
 おそらくこの近くで別の敵と戦っていたか、または天界からいち早くここの異変を察知したかしたのだろう。マントをなびかせて現れたピッコロを認めたベジータは、即座に彼に向かって叫んだ。
「ピッコロ! こいつを頼む!」
 言うが早いか、彼は抱えていたトランクスをピッコロに向けて放り投げた。
「!?」
 突然自分に向けて投げられた少年の身体を、ピッコロは慌てて受け止める。
「おい、一体何が…!」
「今は説明している暇はない! とにかく、そいつを連れてすぐにここを離れろ! オレは奴を何とかする!」
「! おい、ベジータ!!」
 だが、それ以上の問答をする間をおかず、彼はキッと眦(まなじり)を決して身を翻し、嵐の元凶へと向かって飛び立った。
 詳しい状況はわからないが、とにかくここが危険な状態であることは間違いないようだ。まずは、トランクスの身の安全を確保することが先決だろう。
 そう判断したピッコロは、無言で向きを変えると、嵐を振り切るようにその場を飛び立った。

『死ね、死ね死ね死ねーーーーーッ!! 憎きサイヤ人もろとも、すべて滅びてしまえ!』
 けたたましい叫びと共に瘴気の風は猛り狂い、大地を割り、岩を砕き、周りのもの全てを飲み込んでいく。
「──そこまでだ!!」
 空間を歪め、更にその口を広げようとする闇の渦の前に、ベジータが単身で舞い戻る。
「これ以上、くだらない真似はさせん! ……はああああ───っ!!!」
 澱んだ空間を裂き、咆哮が響き渡った刹那、彼の身体から凄まじい気が立ち昇り、溢れ出した光が火花となって四方に飛び散った。
「消えろ───っ!!!」
 広げた両手に全身の気を集め、ベジータは一気に敵もろとも瘴気の渦にむけて渾身の一撃を放つ。
『ぬああああ!! おのれ、サイヤ人め…っ!! …がぁぁああぁ!!』
 撃ち放たれた凄まじい光の嵐は、敵が張り巡らせた防護の壁を打ち砕き、禍々しい瘴気の波を飲み込み、瞬く間に消し飛ばしていく。
「くっ…!!」
 空間を捻じ曲げかねないほどの膨大なエネルギーがぶつかり合う衝撃は、至近距離で立ちはだかる彼の身体にまともにはね返り、傷を負った身体がみしみしと悲鳴を上げた。
 だが、ここで押し切られるわけにはいかない。
 完全に、すべてを消し去るまでは。
『おのれ…ッ!! このまま、終われると思うかぁッ!!』
 己に迫る圧倒的な力に、血走った眼に憎しみに歪んだドス黒い殺気を漲らせ、敵が呪詛の声を上げるものの、勝敗は既に決していた。
 ──が。
 彼が放った光の波が、すべてを飲み込んで弾けたかに見えた、その刹那。
 ──ヒュンッ──
 空を裂く細い唸りと、まっすぐに光の渦を突き抜けて向かってくる紅い閃光にはっと気づいた時は遅く。
「!!」
 ザクリ、と皮膚が切り裂かれる鈍い音と共に、研ぎ澄まされた刃物のように密集した瘴気の切っ先が、彼の胸を正面から貫いた。
「…っ、…が…っ!!」
 一寸遅れて焼けるような激痛が脳を駆け巡り、真っ赤な鮮血が飛び散る。
『ククク……言っただろう、このままでは終わらんと。貴様も、道連れだ……!』
 今にもかき消えそうな光の渦の中にあって、なお薄い笑みを浮かべた敵の哄笑が響く。
「…ぐ…、がはっ…!!」
 ベジータの表情が苦痛に歪んだ瞬間、多量の鮮血が宙に散り、物質化した瘴気の紅い刃にぽたぽたと滴り落ちていく。
 直接臓腑を焼かれるような激痛に意識が霞む中、それでも彼は腕を引き上げて瘴気の刃を掴み、右の拳に気を集中させる。
「……そんな…に、遊んで…ほしいなら、あとは…地獄で、付き合ってやる……!!」
 残されたすべての力を右手に集め、彼は叫んだ。声の限り。
「くらえ───っ!!!!!」
『!! う、うがああぁああッ!!』
 最後の力を振り絞って放たれた渾身の一撃は、今度こそ敵の姿を巻き込んで瘴気の渦に炸裂し、光の烈風となってドス黒い闇をかき消していく。
『おのれ…ッ! だが、もはや貴様にも…逃れる力など、残っているまい…! 一足先にあの世で待っているぞ…!! グアアアアッ!!』
 断末魔の叫びを残し、敵の影は完全に光の嵐に飲み込まれていった。同時に、無理やり空間をこじ開けていた力も消滅したためか、中空に大口を開けていた闇の空洞も、急速にその引力を失い、小さくなっていく。
 爆風と熱気の余波が渦巻き、火花が飛び散り、歪んだ気流がうねりを上げる。
 その様子を、激しく肩で息をしながら見届けていたベジータだったが、完全に敵の気配が消滅したのを確認した瞬間、ふっと宙に留まっていた身体が力を失う。
 最後の一撃に残った気力のすべてを賭け、深手を負った状態で体力も限界を通り越していた彼には、急速に変化する気流に耐えるだけの力も、既に残っていなかった。
 髪の色も容姿も超サイヤ人4の力を失い本来の姿へと戻り、閉じていく闇に流されるまま宙に舞う。
(……あと、は、頼んだぜ……あいつらを……)
 途切れかけた意識の底で、残された者たちのことをかすかに思う。が、もはや指一本動かすことも、できそうになかった。
 そして、今まさに閉じようとする空間へと、その身体が飲み込まれかけた刹那。
「ベジータ!!」
 突然、腕をがしっと掴む感触と、自分の名を呼ぶ声が届いた。
(………?)
 薄らいだ意識が怪訝に思う間もなく、強い力でぐいっと引き戻される。
「──はぁっ!!」
 そして短い気合と共に衝撃が弾け、闇の穴は完全に閉じ、消滅した。
 嵐の残滓が尾を曳いてしばし辺りを漂い、それが徐々に収まっていくのを感じながら、彼は重い瞼を必死にこじ開け、顔を上げる。
「……!?」
「大丈夫か、ベジータ!」
「……ピ、ピッコ…ロ……!?」
 掠れた声が、驚きの色を滲ませて洩れる。
 ピッコロはそのまま地上へ下り、極力負担をかけないよう、ゆっくりと岩陰に彼の身体をもたれかけさせた。
「……き、きさ…ま、なぜ、戻って…!? トランクス…は、どうした…!!」
 先刻息子を託した相手がなぜここにいるのか、彼は途切れ途切れの声で詰め寄った。
「大丈夫だ、トランクスなら悟飯に任せてある。今、天界へ向かっているだろう」
 そう告げながら、ピッコロは脱いだマントの裾を大きく裂く。
「……そう、か……。……ぐっ……!」
 彼の返答に、ホッと安堵の色を見せたベジータの表情が、しかしすぐに苦痛に歪む。
 声を絞り出すごとに胸や脇腹の傷口が悲鳴をあげ、新たに流れ出る血が、吸い切れなくなった戦闘服から滲み出し、地面にじわじわと浸透していく。
 だが、今の彼にはそれよりも気にかかることがもうひとつあった。
「……それ、より……き…さまも、ここに…いる場合じゃ、ないだろう…! 連中は、まだ……」
「心配いらん。西の都には、悟空が向かってる。そこにいる者もすぐに避難させるはずだ」
「………そう…か………」
「もう喋るな、傷に障るぞ。気休めだが、何もしないよりはマシだろう」
 今度こそ本心からの安堵の表情を覗かせたベジータの上体に、裂いたマントの布をきつく巻きつけ、応急処置を行う。
 傷から溢れる血が瞬く間に白いそれを真っ赤に染めていく。肩と脇腹もかなりの深手だが、更に厄介なのは胸部だった。ギリギリのところで急所は外れているようだが、抉られた傷口は相当深く、致命傷に至ってもおかしくなかった。
 包帯代わりにして巻きつけた白い布地が、間を置かず深紅に染まっていく様が、傷の深さを物語る。その様子に息を飲むが、表情には出さない。
 今ここに仙豆はない。だが、一刻も早く治療を施さなければ、彼の命はもたないだろう。
「…しかし…きさまも、物好き、だな。オレ…なんぞに、構ってる…暇が…あれば、他に…やることが、あるだろう」
 既に自力では動く力も残っていないベジータは、不本意ながら黙って手当てを受けていたが、それでも他者の助けを借りることにはプライドが咎めるのか、ぼそりと憎まれ口を吐く。
 こんな状態でもそんな悪態をつく彼に、ピッコロは苦笑した。
「今はこっちが優先だ。……それより、おまえもいい加減に自覚したらどうだ」
「……? 何を…だ」
「おまえはもう、そうそう勝手に一人で死ねる身じゃないだろう。またあの二人を泣かせる気か?」
「………!」
 最初、怪訝そうにピッコロを見返していた彼の面差しが、その言葉の意味を理解した瞬間小さく動き、気まずそうにそっぽを向いた。
 その彼らしい仕草に、ピッコロは手を止めずに小さく笑みを浮かべる。
 魔人ブウとの戦いの時、初めて命を賭けて自分以外の者を守ろうとした彼の決意。そして、彼を失った時の妻子の嘆きを、ピッコロは間近で見てきた。
 だからこそ伝わってくる、彼らの絆の強さ。もう、どちらも失わせてはならない。そう思わせるには十分すぎるほどに。
「おまえの痛みは、今はあの二人の痛みでもあるんだ。……だからもう少し、自分の身も顧みろ。おまえが死んだら、あいつらがどんな顔をするかわかるだろう?」
「……大きなお世話だ、くそったれ」
 そっぽを向いたまま呟かれた声は、ともすれば聞き逃しそうなほど小さく、細かった。
「……まったく……どいつもこいつ…も、お人好しにも…程がある、ぜ。……甘っちょろくて、反吐が出そうだ……。……オレ自身にも、な」
 額に汗の浮いた、口を開くのも辛そうな顔で彼はそう呟き、舌打ちした。
「それだけ憎まれ口が叩ければ十分だ。すぐにデンデのところへ連れて行くから、もう喋るな。じっとしていろ」
 軽口を叩きながらも、一刻の猶予も許されない状況に焦りは増す。気休め程度の処置で、どれだけベジータの身体がもつか。ピッコロは自らの手に汗が浮かぶのを感じた。
「少し急ぐぞ。しばらく辛抱しろ」
「……」
 止血を終えて背負った身体はぐったりと重く、既に意識を失いかけているのか、返事はなかった。
 出血のために少しずつ彼の体温が低下していくのを感じ、焦燥感に拍車がかかる。
 ───まだだ。まだ、死ぬな。
 胸の内でそれだけを呟き、ピッコロは神殿に向かって全力で飛び立った。
はいこちらは本来の趣味大全開なシチュですね(笑)
トラを懸命に庇いながら戦う王子とか深手を負う王子とかも勿論ですが、何よりピコさんとの会話が書きたかった一品ですv
王子ってああいう性格だから、自分自身のことにはほんと疎いと思うんですよね。。ブルマさんとトラを大事に思うならば、もちっと自分の身も考えればいいのになーとも思うわけです。
愛する人の為に命を賭けるだけでなく、その人たちの為に生きることも大切だと思うのだ。うん。
まあ、自分の身のことなんていちいち顧みないからこそ王子だという気もしますけどね(笑)


 空気を震わせる鋭い音と共に、息をつく間もなく矢継ぎ早に飛んでくるエネルギーの渦を必死に避けながら、トランクスは両手から気功波を放った。
「このぉっ!!」
 渾身の反撃は、彼の周りを飛び交っていた影の数匹を巻き込んで消滅させたものの、数が多すぎるため全滅させるには程遠い。
 一旦地面へ降り、トランクスは肩で粋をしながら険しい表情で空を見上げた。
「へー、チビのくせに意外と頑張るじゃないか。こいつら相手にこれだけ持った奴ってのは、そういないぜ」
 いかにも楽しげな、それでいて嘲笑を含んだ声が降ってくる。
「くそぉっ…!」
 からかうような物言いに、幼い眼差しを怒りの色に染め、ぐっと拳を握る。
「おまえ、卑怯だぞっ! 一対一で正々堂々とオレと戦えっ!」
 ギギィ、ギャア、と耳障りな声を立てて飛び回る無数の黒い獣の影を従わせ、悠然とトランクスを見下ろす相手は、その言葉にさも呆れたようにくっくっと喉を鳴らした。
「はぁ? 何言ってんだ? 俺はキミと戦うことが目的じゃないんだからさ。ドラゴンボールってやつの探し方さえ教えてくれれば、こんな面倒なことしなくても済むんだから、早く喋ってくれたら助かるんだけど」
 小馬鹿にするような敵の嘲笑に、翡翠色の鋭い視線に更に怒りの色がこもる。
「そんなこと、知らないって言っただろ! 知ってたって、おまえなんかに教えるもんか!」
 ──この山の向こうには、西の都がある。もし奴らが、ブルマがドラゴンレーダーを作れることを知ったら、必ずブルマを狙うだろう。それだけは絶対に知られてはいけない。だから、ここを通すわけにはいかない。
 そう堅く決意して単身敵に挑んだものの、流石に彼一人では荷が重すぎた。一見して普通の少年にしか見えない相手の力は未知数で、何か不思議な魔法のような力で、配下の怪物を次々と生み出してはそれを差し向けてくる。
 実体のない異界のモンスターは生半可な攻撃では消すことができず、半端に反撃すれば分裂して逆に増えてしまう。
 実戦経験も少なく、まだ幼い身体ではそうスタミナが続くはずもないトランクスは、既に体力の大半を使い果たしてしまっていた。
 敵の勢力は依然として衰える様子もなく、むしろ面白がるようにトランクスの奮闘を見下ろしている。
(くそっ……せめて、悟天がいればフュージョンができるのに…!!)
 だが、一時間ほど前にはぐれてしまった親友の気を集中して探すこともできず、近くに他の仲間がいる気配もない。おそらく、それぞれが別の場所で別の敵と戦っているのだろう。一人で切り抜けるしかない今、状況は最悪に近いと言えた。
 それでも。
 ここを退くわけにはいかない。
(負けるもんか……パパがいない時は、オレがママを守らなくちゃいけないんだ!!)
 今回の異変の原因を探るため、悟空と共にもっと危険な場所へ赴いているはずのベジータのことを思い、奥歯をぐっと噛みしめる。
 どうすれば、この状況を切り抜けられるか。
 幼いながらも賢明な彼は、必死に考えを巡らせた。
 頑として戦う意志を崩さないトランクスの姿に、少年はやれやれとため息をついた。
「しょうがないなぁ、それじゃ。喋りたくなるように、もう少し痛い目にあってもらうしかないかな」
 面倒臭そうに呟くと、徐にパチリと指を鳴らす。
 すると同時に、上空を旋回していた影の群れが一斉に方向転換したかと思うと、真っ直ぐにトランクス目がけて急降下し、彼を取り囲んだ。
「!?」
 突然至近距離で囲まれて一瞬身構えるのが遅れた隙を逃さず、瘴気の塊そのものとも言えるドス黒い獣たちは、大口を開けて凄まじい閃光をトランクスに向かって放った!
「うわぁああ!!」
 血の色のような禍々しい紅い稲妻が縦横無尽に荒れ狂い、小さな身体を打ち据える。
 焼き切れた道着の端が塵と化し、皮膚が焼け爛れる感触が激痛となって全身を駆け巡り、一瞬目の前が真っ白になる。
「……あ、…ぅ……」
 ばちばちと火花を飛ばす衝撃に耐え切れず、小さな膝ががくりと折れる。それでも、辛うじて手をつき、崩れ落ちることを堪える。
 その前にゆらりと足が降り立ったかと思うと、胸倉を掴んで引っ張り上げられる。
「へー、今ので気絶しないなんて大したもんだね。瘴気のエネルギーは生身の人間には毒そのものだから、触れただけでもかなり生命力を削られるはずだけど」
「……うぅ……」
 珍しい玩具を見つけた子供のように、けれど限りない悪意を湛えて哂う少年に、飛びかけたトランクスの意識が引き戻される。
「どう、少しは喋る気になった? 俺もあまりモタモタしてらんないからさ。あんまり意地になると、キミのためにもならないよ?」
 少しだけ苛立ちを含んだ、確認するように響く声に、トランクスは必死に薄目をこじ開け、睨みつける。
「……誰が……、喋る……もんか……! おまえ、一人じゃ、オレに勝つ、自信……ないから、戦わないんだ、ろ…! そんな、奴に…負けるもんか…!」
 途切れ途切れに、けれどはっきりと、トランクスは抵抗の言葉を投げつける。
 その瞬間、少年の紅い瞳に氷のような冷たさがよぎった。
「つくづく気に入らないなぁ、弱いくせに。もういいや、死んじゃっても文句言うなよ。そらっ!」
 明らかな殺意が両眼に宿った刹那、少年の手から深紅の濁った波動が立ちこめ、トランクスを巻き込んで凄まじい衝撃と共に爆発した!
「うぁああああっ!!」
 避けることもできず、まともに瘴気の凶刃を食らって吹き飛ばされる。
 金色の髪は光を失い藤色へと戻り、衝撃の余波でゆらりと宙に舞った刹那、それでも脳裏に浮かぶのは、両親の顔。
(……ちくしょう……、悔しい、あんな奴に………。ごめん、パパ、ママ……)
 霞む意識の底で呟き、指を動かすことすらできず、重力に引かれて落下していく。
 やがてその小さな身体が地面に叩きつけられようとした、その時。
 がしっ。
 少しの衝撃と同時に、トランクスの身体は硬質な地面ではなく、温かな感触に受け止められた。
(………?)
 既に痛覚は薄れかけていたが、頭から落下する衝撃を予測していたトランクスは、その感覚を不思議に思い、懸命に目をこじ開ける。
「……あ……」
 霞み、ぼやけた視界に映ったのは、今この時に、もっとも見たいと願っていた顔。
「……パ、パ……?」
「遅くなってすまなかったな。大丈夫か、トランクス」
 息子の身体をしっかり抱きとめ、ベジータはささやいた。静かに。
「パパぁ……」
 漆黒の髪、鋭い黒曜石の眼差し。自分を抱き上げる逞しい腕の感触と、穏やかに響く低い声。
 おぼろな意識で、しかし確かに間違いない父の温もりを感じ、掠れた声が洩れる。
「ごめん……オレ、頑張ったんだけど……パパの代わりにって、頑張ったのに……悔しい、あんな奴に……」
「ああ、わかってる。おまえはよくやった。後はオレに任せて、少し休んでいろ」
「……うん……」
 そう呟くなり、安心したのか、トランクスはふっと意識を手放した。
「………」
 ボロボロの小さな身体を抱きかかえ、ベジータはゆっくりと地上に降りると、可能なだけ気を分け与え、息子をそっと岩陰にもたれかけさせるように下ろす。
「へー、あんたがそのチビの親父?」
 遠巻きにその様子を眺めていた少年が、面白そうに笑う。
「じゃあ、あんたなら知ってる? ドラゴンボールってやつのこと」
「……それがどうした」
 トランクスを寝かせ、徐に立ち上がったベジータは、そこでようやく少年に向き直った。
「そのチビに教えてもらおうと思ったら、変に意地張っちゃってさ。ドラゴンボールを探せる機械を作れる女がいるって聞いたんだけど、知ってたら教えてくれないかな」
「……さあな」
 ビリ、と周りの気流が揺れ、自分に向けられた眼光に、少年はふと目を瞬いた。
 さっきの子供とは、明らかに纏っている空気が違う。
「…なんだ、知らないの? それとも、あんたもそのチビみたいに、知ってても教えないってクチ?」
「……さあな」
 もう一度同じ台詞を繰り返す相手に、「どうやらそうみたいだね」と少し苛立たしげに目を細める。
 自分に向けられる、静かな、鋭利な刃のような視線を少し警戒しながらも、少年の口調はあくまで軽い。
「じゃあ、面倒だけど同じ目に遭ってもらうしかないかなぁ。大人なら、もう少し聞き分けがいいことを願いたいけど」
「……やってみろ。できるものならな」
 その、感情を抑えた低い声色に垣間見えるのは、幾重にも隠された深い響き。
「やれやれ。まったく、なんでこう無駄な意地っ張りが多いのかな、この星は?」
 だが、そんな感情の機微には頓着もしない少年が、面倒臭そうに腕を振ったと同時に、待機していた獣たちが一斉に動く。
「……ふん。クズは数で攻めることしかできないってのは、どこでも同じらしいな」
 耳障りな鳴き声を上げて向かってくる黒い影の群れを一瞥し、黒曜の瞳に鋭い光が走る。
「面倒だ、まとめて片付けてやるからさっさとかかってこい」
 表情ひとつ変えずに指で招き寄せる仕草をするベジータに、少年の両眼が細くなる。
「はっ、大した自信だね。じゃあ、お望みどおりにしてやるよ!」
 ぱちりと少年が指を鳴らした瞬間、飛び交っていた黒い獣が一斉にベジータ目がけてその牙を剥いた。
 瘴気の渦がうねり、紅い閃光が迸る中、ベジータは静止したまま、まっすぐに集中攻撃を仕掛けてくる黒い影を見据え、瞬時にその力を解放した。
「───はああっ!!!」
 気の流れが急変し、小規模の爆発が起こったような衝撃が四方に走り抜け、金色の光の荒波が放射状に広がり、無数の火花が弾け、飛び散る。
「!?」
 突然目の前で巻き起こった凄まじい気の波動に、一直線に向かってきた獣たちは逃れる術もなく巻き込まれ、ギィギィと断末魔の悲鳴を上げて次々に光の渦に飲み込まれていく。
 荒れ狂った光の爆風と衝撃が尾を引きながら散り、ようやく収まった時には、黒い獣は一匹残らず塵と化し、影も形もなく消滅していた。
 何事が起きたのかと眼を瞬く少年の前で、金色の火花を全身に纏ったベジータの影が、舞い散る白煙の中からゆらりと現れる。
「な……」
 トランクスより遥かに上の、桁違いの力を目の当たりにした少年が、信じられないといった顔で呆気に取られる。
「お遊びはこれまでだ。散々好き勝手やってくれたからには、覚悟はできてるんだろう?」
 ざり、と踏みしめられた土が、飛び散った火花に触れた瞬間に炭化し、白煙となって四散する。
 全身から発せられる金色のオーラが、彼を取り巻いてうねりを起こし、陽炎の如く立ち昇る。
「跡形もなく消し飛ばしてやるぜ。塵も残らないくらいにな」
 あくまで静かな声音の中に、それでいて凄まじいまでの殺気を湛え、凄烈な光を映した翡翠の瞳が、怒りの色と共に揺らめいた。
これはちょっと毛色を変えてベジ&トラなお話です。単にチビトラの危機を助けに颯爽と現れるひたすらカッコイイパパが書きたかっただけw
時期は勿論ブウ編後。パパとママのために奮闘する健気なトラと、大事な息子を傷つけられて半端ない怒りでブチ切れるパパが書けて満足でしたv
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